タオルが返ってきた。
三ヶ月前、洗濯物としてベランダに干したところを風に飛ばされたと思われていたタオルだ。
日本人で名前を聞いた事がない人は居ないであろう超有名バンドのツアータオルだ。
- 経緯 -
今日、朝の九時くらいにある親子が我が家に来た。
挨拶をするなり、僕がなくしたとばかり思っていたタオルを差し出してきて
「うちの息子が持って行きました。本当すみません。」
と頭を下げてきた。
最初、何を言ってるかよく分からなかったが、事情を聴くに
「アーティストタオルがよく干してある事を知っていた」
「その中に有名バンドのタオルがあってどうしても欲しかった」
「物干し竿的なもので取った」
「家で母親が洗濯する際に気が付いて家族会議」
という事らしい。我が家はアパートの2階だぞ。行動力すげーなオイ。
- 背景 -
僕は確かに色んなアーティストタオルを干したりしていた。
僕は音楽が好きだ。ロックバンドもレゲエもポップミュージックもクラブサウンドもアイドルもジャズもクラシックも好きだ。邦楽洋楽問わず好きだ。
そしてライブに行くのも好きだ。ライブでグッズを買うのが生きがいと言っても良い。
着たり使ったり干したりは当たり前だった。
- ここまでの感想 -
親子の謝る姿勢が素晴らしく感じた。
それこそ中学生が悪さをして、何より先に頭を下げられる大人は今時少ない。
子供に自ら示し行動する良い親だと思った。
話を聞いていくと教員をやっているという。
素晴らしい教育の元で改心し良い大人になれよ等と思っていた。
- 怒りの矛先 -
十数分、話も理解したし、息子さんも大分絞られて憔悴した様子だった。
息子は優しい良い子と言った感じで、本当に反省している様子でもあった。
これにてと思っていた。
帰る間際、母親に「これ見よがしにアーティストのタオルを干さないで下さい」と言われた。
若干キレ気味で2分くらい「見せる方も秩序が」なんとかゴチャゴチャ言って満足げに帰っていった。
- 考察 -
最初、謝ってくる事自体やその姿勢が良かったので感動した。
僕自身はなくしてめっちゃつらかったので、「思い出深いタオルなんだ。ありがとう。」と思った。
ただ最後はちょっと理解できなかった。
小学校で「君をいじめているA君が謝るので放課後職員室に来て」と言われてノコノコ行くと先生に「いじめられてるのをちゃんと言わない君も君」と言われたのを思い出した。
つらかった。
この一件が教員の言葉だと知って報復の手段を考えるフォロワーも居た。
ただ、この母親一人変えても教育体制は何も変わらないだろうし、何より反省した息子に対して失礼だと思う。母親の社会的な死は子供の死でもある。
あとフォロワーから苦し紛れにこういう意見をもらった。
まったくもってその通りだ。まぁ大切なタオルならベランダの一番内側に裏返して干しておきゃ安全じゃないっすかね……少なくとも加害者サイドが「不注意なのも悪いんだよ」と言う権利はゼロではあるが。
— 聖 月夜 (@HijiriTukiyo) February 8, 2015
音楽が好きなのに、そのグッズを大切に管理できてないようじゃダメだ。とても反省した。
どうしてこういう人は後を絶たないんだろうか。怒りや悲しみで論理的ではない事を言ってしまうのか、何か根強い思想の元に生まれてきた和解策なのか、言わされているのか。
結構複雑な気持ちで過ごした一日だった。
とりあえずタオルが返ってきた幸せで帳消しにした。